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道端に一輪の花が咲いている。



本当に小さい赤い花だったが、小さな花弁を精一杯、自己主張して広げているかのような

綺麗な赤い花。


小さいながらも懸命に生きている。


一見、生命力は溢れていて、輝いているように見えた。

そして何より美しい花だった。

気になって、私はかがみこみ、赤い花を見つめてみた。



近くで見ると、花弁の所々がしおれていた。

元気に見えたのは、遠目に見たからか…。

どこか苦しそうでもあった。

このままだと枯れてしまいそうだった。


そして花は何かを語りかけてくる。

小さな声ともわからない声で。

私は耳を傾けた。



どうか助けてください…


そう言っているようだった。



見た所、赤い花が生えている土は良くない。

この土は腐っている。

このままでは

いずれは枯れてしまう…。


この場所は赤い花にとって、苦しさを生むばかりなのだろう。

花の言うことは、もっともに感じられた。




「助けてもいいが、私のものにするよ。家の庭に持ち帰り、愛でたいのだ」


しばらくしてから

もちろん、それで構いません、そしたら幸せです。お願いします、と赤い花は言った。

期待に輝いているようにも見えた。




「そうか」私は考える。

花の根は、繊細で傷つきやすい。

一気に土を変えると、花は死んでしまう。

時間をかけて、根気よく、新しい土に植え替えていく必要があった。



「ならば助けてあげようか

 君のような花を愛でるのは好きだからね。



 …でも、私の愛で方は


 …元気になった花を足で踏みにじることなんだ」



そんなことを言えば、

赤い花は、絶句するにちがいない。


でも、

私の予想とは裏腹に

赤い花は、すぐにこう言う

「それでも構いません、お願いします」

と。


そしてその言い方は、心底、嬉しそうだった。

本当にそう願っているのが、理解できた。



私は、土を入れ替えて、家に持ち帰ることにする。




花を踏むために。


そして、暖かく包み込むために。






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