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悦子は25歳になる美しい女だった。銀行でOLをしている。
どことなく冷たい美貌と、時折垣間見せる可愛らしさがミスマッチな女。

彼女の両親は会社経営をしていて、何不自由なく育てられた、と言う。
欲しいモノはだいたい与えられた。
今までつきあった男は、彼女のちょっとした我が儘も受け入れてくれる人ばかり。
現在の彼は優しく頼りがいもあり、なんの不満もない。

だが男性に媚びることは、自分のレベルを落とすような行為だと思っている。
自尊心が強い、というのは自覚しているが、悪いこととは思わない。
自分は幸せだと信じている。

こういう話をきくと、
安いSM小説のようだな、と思われる方も多いかもしれない。
プライドが高い女が、SMにより性に溺れていく・・。
いままで感じたことのなかった屈辱感に酔いしれる・・。

そんな話は現実にはめったにない?

彼女が最初に当時のサイトにメールしてきたとき、
たった三行しか文章を書いてこなかった。
M性診断で、8(当時のサイトに20の質問からなる貴女のM度を判定します、というページがあった。1-10で、10が最もM度が高い)でした、と感想のようなメール。

そしてチャットとメールをはじめると、頑なまでに自分はMではない、と言い張る。
珍しいタイプだった。
いろいろなM女性と話たが、Mを極度に否定する、というパターンは意外とないものだ。
一番わかりやすい反応なのに、である。

話を重ねていくと、悦子が特別に反応するポイントは、「身分」だった。
奴隷という「身分」である。
「男に媚びるということは、かわいくない女の人がすることだと思っていました」
そんな不遜な事を信じている悦子。
男にちやほやされる事に慣れ、イライラすれば男に我が儘を突き通してしまう事で解消する。

そんな悦子は、奴隷という「身分」に反応した。


「身分」

たとえば

服を着たままの私に対して、全裸で足元にひれ伏し丁寧な言葉遣いで挨拶する。
たったそれだけの行為で、悦子は奴隷としての「身分」を自覚する。

M字開脚で緊縛され、すべてを観賞される事に対し、
悦子は観賞「していただく」と感じるようになる。
奉仕を「する」のではなく
「させていただく」と感じるようになる。

奴隷は卑しい身分である。
それ故に感じる主人に対する敬虔な気持ちは、悦びを大きくする。
すべての行為を感謝して受け入れることができる。

奴隷の美しさは、
いままでの悦子の高慢なプライドによる偽りの美しさとは
まったく次元の違う、本質的な悦び。

プライドとは自分を守るため、
自分の弱さを隠して表面的な、外見的な、世間的な満足を得るためのもの。

奴隷の悦びとは
すべてをさらけ出した後に残るものを
肯定される悦びなのだ。

それができるようになる過程を調教という。




そんなことをゆっくりと二ヶ月ほど話した。
悦子は「そんな事は受け入れられるわけがない」とよく抵抗した。
だが拒絶が大きいほど、その揺り戻しは大きいのだ。
大きな抵抗の後、予想以上の反応をすることがでてきた。




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抑圧されていたモノが爆発する。
押さえつければ押さえつけるほど、その揺り戻しが大きい。
ゆっくりとSMについて語り合っていった結果
悦子はこんなことまで口にするようになった。

「ああ・・・みないで下さい
・・とっても恥ずかしいです・・
こんな格好したら・・奴隷としてほんとに調教されてるみたいです・・
ああ・・御主人様との身分の違いをはっきり感じます
いろいろな事をきちんと身体で覚えるように厳しくご調教おねがいいたします
悦子のような卑しい身分で、、卑しい身体でご主人様に満足いただけないことは
当然ですが、奴隷として最も幸せなことはご主人様の一部となりお役に立つことです
悦子は奴隷としての身分を心から欲します。
ああもっともっと悦子に奴隷のすばらしさ、美しさを教えてください・・
ご主人様のお時間が空いたほんのわずかな合間に悦子の身体でお好きなだけ
存分に遊んでいただき、ご満足の印として、奴隷の悦子にとって最もありがたい
ご主人様の精液をかけていただく・・ いえ、、そんな高望みはいたしません、
ああとても謙虚な気持ちになれています」


悦子は自分にとって奴隷調教されるとは何か、はっきりと理解したようだった。
プライドと真逆の悦び。

だが彼女は混乱しているようでもあった。

そこに一歩足を踏み入れてしまえば二度と後戻りできない気がする。

なぜなら自分の人格とSMは切っても切れない関係だから。
性的な部分だけを切り取ってSMを語ることはできない。

SMプレイがしたいわけではない。

生き方そのものの問題。

こういう想いに直面するM女性は少なくないのではないだろうか。

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悦子は言った。

「現実に奴隷調教される事は、今までの人生を捨てるくらいの覚悟がいります
そうでなければ、奴隷調教される意味が感じられません、、
あれだけ生意気だった悦子に奴隷として生きていくことを教えていただき
世間的に見れば嫌らしくて下品で汚い奴隷が
本当は悦子にとって幸せで素敵な状態だったことに気づくことができました
もし社会生活を捨てて毎日御主人様に飼って頂いたらけだもののように
本能のみでいきる動物になってしまうかも知れません。
一般常識で言うとそれは最低な行為なのでしょう。
しかしもっと奥深く考えられる人にとっては
それこそが本物の幸せなのかも知れません。
その覚悟はとても大きなものがあります。
おおきなためらいがあります。
本当にわたしは・本当のわたしになってしまってよいのでしょうか」


人生を捨てるくらいの覚悟が必要だからこそ、
その一歩踏み出す勇気が必要であればある程、
その言葉が発せられるたびに
悦子の気持がわたしの心に伝わってきた。
Mが故の気持ち。
その気持が伝えられるたびに、わたしは悦子が奴隷に
抱いている気持の強さを思い知った。

悦子は考える。
自分の理性は大丈夫なのだろうか。
知性を持った人間としての生活をおくれるのだろうか。
こわれてしまうのではないか。

彼女は頭の中で考え
その反対で
心で感じ
葛藤した。


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悦子が奴隷となる気持ちを固めるまで、わたしは辛抱強く待った。
無理矢理奴隷へ堕とすのは、趣味ではない。
脅迫めいた事を口にして、言うことをきかせたとしても、
それはうわべだけの服従にすぎない。
悦子が考えに考え抜いた後にこそ、
自主的な奴隷への道という
いっそうマゾヒズムをくすぐる状況が生まれるのだ。

自分で自分を奴隷へ追い込む。
自分で、自分の心の奥深くを発見させる。
それが理想的な調教のはじめ方ではないか。

20歳になる前に、密かにマゾ的行為を強く夢想する女性は、
その後すんなりと、ふとしたきっかけで、この世界に入る事が多い。
ゆっくりと時間をかけてフェードインできる。
誰から強要されるもなく、知らぬ間に自分で育む時間がある。

だが、悦子は、突然「それ」に気づいてしまった。
しかも成人した後に。
一気に燃えあがる気持ちを押さえることは、わたしと会話することから
距離を置くしかない。

話し始めた当初から
悦子は何度かそれを試みようとした。
話すのをやめたい、と。
こんなことを話していては頭がおかしくなってしまう。

だが自ら前言撤回してしまうのだ。

再び私との会話が続けられる。

半年ほどの時間が経過したのだろうか。
悦子は言った。
「抵抗することをあきらめます。無意味に思えてきました」

わたしへの抵抗ではなく、
自分の心への抵抗なのかもしれない。

スポーツ選手がよく口にする科白と重なる。
敵は自分。

悦子は自分の心の敵に勝ったのだろうか。
それとも負けたのであろうか。

そんな、たいそうな事を考えてしまう科白だった。

どうやら、悦子本人は
自分に負けたと感じているようだった。

だが本当のところはどうなのだろう。



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